佛教大学鷹陵同窓会
会長  河田 茂美
『 而今生涯 』

 

同窓会会員の皆様には、日頃より同窓会活動へのご理解、ご協力を頂き感謝申し上げます。引き続き鷹陵同窓会の会長を務めさせて頂くことになりました。微力ではございますが、今後とも宜しくお願い致します。

仕事柄、日々多くの求人情報を目にしております、その中で「而今」という介護施設名が気になり始め、どの様な意味なのかを調べてみたところ、曹洞宗の道元禅師の唱えた言葉に由来するものだと分かりました。

「而今」とは、「いま、現在」という意味であって、「にこん」とも、「じこん」とも読み曹洞宗では「にこん」と読みます。

それは、過去にも未来にも捕らわれることなく、今という一瞬一瞬を大切に生きるという事の様です。

すなわち、社会で活躍してきた人達が、人生の到達点に達し、終の栖で過ごす心得として、その施設の設立者が願いを込めて、「而今」と名付けたのではないかと、私は推察しているのです。

実は、私自身今年の十月で七十才を迎え、正真正銘の老境に入ると、自覚を新たにしているのです。

そこで、今後、老境を迎える自分には、まだ何か出来る事があるのだろうかと考えている時に思い浮かんだのは、茶道に由来する、「一期一会」という四字熟語の言葉でした。

その語源は「茶会に臨む際は、その機会を一生に一度のものと心得て、亭主・客ともに互いに誠意を尽くせ」といった教えから来たものといわれています。

だから、何度も会う機会がある人であっても、この時間は二度と巡って来ないのだから、この一瞬を大切に思い、今できる最高のおもてなしをしましょうというのです。

それにしても近頃、憂慮しているのは、あらゆる分野で急速にIT化が進み、私達はそれによって多大なる恩恵を受けているのですが、反面、情報過多により、取捨選択が適切になされていない状況が見受けられます。                              

特に若い人の一部には、SNSなどを通じて、多くの情報を得、自分より賢い人や成功している人がいて、常に周りと自分を比較することによって自信をなくし、孤独感や疎外感に陥る人たちが増えているというのです。                  

このような現代の世相に対して佛教の教えに「天上天下唯我独尊」という言葉があります。それは釈尊が生まれてすぐに七歩歩いて、その言葉をいわれたと伝えられている教えです。

この言葉の意味するところは、人間はなんらかの条件によって尊いのではなく、人間の命の尊さは、能力、学歴、財産、地位、健康などの有無を超えて、何一つ付加する事のないままで、尊い私という唯一無二の存在を見出す事の大切さを教える言葉だというのです。    

だから、自分と他人とをいたずらに比較するのはナンセンスであって、人は存在するだけで尊いのですから、人と人との係わりにおいて、互いに尊い存在として愛し合わなければならないのだと思います。

以上をふまえて、私のこれからの人生は、「一期一会」の精神をもって、人との関係において、一瞬一瞬を大切に、愛を込め、誠意をもって生きてゆけたらと念願しているのです。

さて、鷹陵同窓会は、3年後に創立70周年を迎えることになります。

私達の同窓会活動は、会員相互の交誼を厚くし、母校の教育発展に寄与し、社会に貢献する事を目的として活動をしてきました。

しかし、昨今、人間関係の希薄化という状況の中、卒業された方の同窓会への関心が薄らいでいるように感じられます。

その結果、新規加入者の減少、それに伴い会員の高齢化・支部活動への参加者の固定化等があり、支部によっては、休止を認めざるを得ない状況となっています。

今後の同窓会の活動については、先代が作り上げた鷹陵同窓会を後進に残す為に、同窓会における限りある資源の中で、随時、必要な活動に対応できる組織運営の再構築を進めさせて頂きます。  

会員の皆様には、今後とも同窓会活動に対して、一層のご理解と、ご協力とを頂きたいと願っております。