佛教大学鷹陵同窓会
会長  河田 茂美
『 志向とその行方 』

鷹陵同窓会の会員の皆様には日頃より同窓会活動へのご理解、ご協力を感謝致しております。

世界中に蔓延した新型コロナの感染症も、五類移行になり一年が過ぎ、終息の方向に向かっているようですが、皆様にはお変わりなくお過ごしの事とお察しいたします。

さて、私達人間の脳には、心に描く全ての思い・空想・イメージ等は、細胞に永久に刻まれると言われている。良い志向からは善が生まれ、悪い志向からは悪なる結果を招く、と断定したものの、簡単に善悪を判断することは難しい問題でもある。

そこで、ある対照的な二人の人物を例にとって考えたいと思います。

一人は、ドイツ・ナチ党の党首となり、その後全ての権力を握り総統と称し、独裁的権力者となって侵略政策を進めた結果、第二次世界大戦を引き起こしたアドルフ・ヒットラー、もう一人は「密林の聖者」と呼ばれたシルベルト・シュバイツアーである。

二人の共通点をあげると、ヒットラーはドイツの一部と考えられていたオーストリアからの移民であり、ドイツ領であったカイザースブルグ出身のシュバイツアーとは同国人と云っても差支え無く、年齢的にもほぼ同時代を生きた二人であった。

ヒットラーは父親が反ユダヤ主義者であって、又、彼が若い頃学んだ実科学校の教授の中には、反ユダヤ主義者がいた。それらは、彼の思想形成において大きな影響を与えたのは確かである。

彼の著書『我が闘争』の中で、民族主義的国家主義の思想を一五歳の頃より育まれていたと自ら語っている。彼の同著において、ユダヤ民族は、常に他民族の体内に住む寄生虫とまで呼び、彼のその激しい憎悪は、第二次世界大戦におけるユダヤ人の大量大虐殺となるのである。

一方、シュバイツアーは、牧師の子として両親の慈愛のもとで幸せな幼少時代を過ごしたのであった。

彼が二十一才の時、人間は自己の幸福を当然の権利と受け取ってはいけないと言う彼の考えに基づき、イエス・キリストが三十才の時から宣教を始めたのに倣い、自分は三十歳までは学問(神学・哲学)と芸術(オルガン奏者)に生き、その後は人に直接奉仕する道に進もうと決心をするのである。

その後、彼は三十才が近づき漠然と考えていた直接奉仕の道を、医師となって実現する道を決断するのであった。

彼は三十才になってから大学の医学科に学び、三十六才の時、医学科の全ての課程を終えアフリカの赤道直下のサンバレネという地に赴き、念願だった直接奉仕をしていく中で、「生命への畏敬」という概念にたどり着く。    

それは、生きようとする己の命は、同時に生きようとする他の生命に囲まれているという事でもあり、だから生きとし生ける、生あるもの全ての生命を尊ぶということこそ倫理の根本であって、それらの生命を守り、これを促進することこそ善であるという。それに反して生命をなくし、これを傷つける事は悪であるという考えに至るのである。これによって彼が研究を進めてきた「文化哲学」の根本的理念が確立したのであった。

その後、この理念は、彼の中心的思想となり、理論だけにとどまらず、その考えを生涯において実践し続けたのである。

私達一人ひとりの生き方は、自分一人のものではなく、他者へも少なからず影響を及ぼすものであって、自分の心の思いには責任をともなうのである。だから私達のような平凡な者であっても、日常においてよい思考へと自分を向けるように努力する必要があるのではないでしょうか。

鷹陵同窓会は、ここ十数年、新規加入者の減少と、それに伴い会員の高齢化・支部活動の停滞など様々な課題が顕在化しております。

それらの課題について、施策を講じて参りましたが、抜本的な解決には至っていないのが現状です。

鷹陵同窓会の永続的な活動を可能とする為、今後は、鷹陵同窓会組織の在り方・運営の見直し等の提案をさせて頂く所存です、会員の皆様方に於かれましては一層のご理解と、ご協力をお願い致します。