Vol.3 社会学部公共政策学科教授  野﨑 敏郎(のざき としろう)教授

 

野﨑 敏郎

のざき としろう

社会学部公共政策学科教授
 ※職名は取材当時のもの

プロフィール

島根県松江市生まれ。信州大学人文学部卒業、神戸大学大学院文化学研究科博士課程単位取得退学、学問の研究テーマでは、日本の幕末明治の社会変動と同時代のドイツとを対比しながら、カール・ラートゲンやマックス・ヴェーバーの事績を研究されています。学内においては、「国際交流センター長」として留学生のお世話に携わっておられます。

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岡﨑先生からのメッセージ

野﨑さんも同窓生と繋がりが深いといろいろあると思う。野﨑先生!いま、学生を連れて地域のあの公共交通機関で、あの路面電車とか電車関係に関心持ってフィールドに行っておられるようなんで是非そういう話を紹介して下さい。

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2010年度から3回、プロジェクト演習という授業を担当しまして、鉄道を中心として地域の住民の足をどんなふうに確保したら良いのか?ということを追究しようということで、たまたまその参加学生達の意向と一致したのが、3年とも路面電車なんです。第1回のときは、富山ライトレールと富山市内中心部の路面電車を見に行きました。昨年は阪堺電軌です。大阪の南部から堺ですが、あそこもいろいろな困難を抱えながら維持されています。今年は土佐電鉄で高知に行きました。事業者が非常に頑張っていて、あまり行政からの補助を受けずにしぶとく営業しているところで、3つとも特徴があって非常に面白かった。
昔は、鉄道の運転士というのはパイロットと同じぐらいの高給だったのですが、もういまは、全然そうではないので、いかにして維持、存続するか、ということを中心に、事業者がどんなことをしていて、それから行政がどんなバックアップをしていて、それから住民も乗車運動を行うとか、いろいろな取り組みがなされています。実際、富山に行ってびっくりしたのは、市の中心部の県庁、市役所がある辺りのバスの本数が2時間に1本あるかないかという状態だということでした。また、県庁所在地でありながら、車を持っていない人間にとってはへき地並みの不便さで、中心部の商店街が寂れてしまい、郊外のショッピングモールに行かないと日常的な買い物すらできません。実は、そういう状況がいま、全国の地方都市に広がっているので、へき地の交通だけではなくて、地方都市において、生徒や高齢者の足をいかに確保するかということがものすごく大変な問題です。
われわれのように、京都や大阪辺りに住んでいる人間は、そんなにピンとこないんですが、少し地方に行くと、県庁所在地でも大変なことになっているんです。私も松江の出身なんですが、帰るたびにバスの本数が減っていて、しかも路線が変で、どうしてまっすぐ行かないんだ!(笑) そんなことになっています。ですから、そこの実態を正確に調べるということが大事なことなので、ここ3年ほどいい経験をさせてもらいまして、鉄道好きな学生が集まって良い取り組みができました。

教育・研究について

いま、取り組んでいる教育・研究は何ですか?

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私の長年のライフワークにしているものというのは、どちらかというと、社会経済史と社会思想史になるのですが、百年ほど前、日本の経済や社会変革の問題に取り組んでいた研究者で、カール・ラートゲンという人物がいまして、彼は若いころ日本に来ていて、『日本の国民経済と国家財政』という700ページもある巨大な本を書きまして、この人の業績が非常に重要であるということに気づき、以来彼の事績を追っています。それからもう一つは、ラートゲンがこれを執筆して、ドイツに帰国した後で、ハイデルベルク大学に勤務します。それは、有名なマックス・ヴェーバーが病気で休職することになりましたので、急きょ経済学の教授ポストを1つ増やして、そこに招いて、ヴェーバーが休んでいる間、代わりに講義を担当するという形で彼が呼ばれることになります。ヴェーバーの著作の中に、『ヒンドゥー教と仏教』とかいろいろあって、その中で日本の話が結構出て来ます。その種本がラートゲンの著作なんです。
私が大学院時代から何回か読んで、ラートゲンとヴェーバーの書いていることを突き合わせていく作業をしていますが、ラートゲンの本は非常に良くできていて、ラートゲンが日本にいたときに、門下生がいて、門下生が英語で日本の歴史についてレポートを書いていて、それを使って詳しい分析をしています。その門下生が作ったノートの草稿が国会図書館にあります。これをずっと読んで、何とか判読をして、それとラートゲンの本を突き合わせて、さらに、ラートゲンとヴェーバーの書いていることと突き合わせていく作業をしています。
ヴェーバーについては、もちろんたくさんの研究者がいますけども、ラートゲン研究をしているのは世界中で私だけなので(笑) それで、こういうものを正確に読んで、自分で掘り起こして、『社会学部論集』にラートゲンの少年時代と青年時代に関するまとめを終えて、次からはラートゲンの大学時代をまとめて、その後ラートゲンの日本時代という計画で論文を書き進めています。

現代の学生気質について

いまの学生気質について…

学生の気質そのものがそんなに大きく変化しているとは思わないのですが、われわれの学生の時代に比べると、ずいぶん慎重な学生が多いという気はします。言いたいことは言うというのが、だんだんとなくなって来ているというのがあって、悪く言えば顔色を伺うというところが非常に強く出ています。打ち解けると積極的にやって来ますけれども、最初から自分のペースをつかむことが難しいという学生が多くなったと思います。

国際交流センターのセンター長をされておられますが、留学生との違いがありますか?

留学生の方が、あらゆる面で積極性があります。ただこれは、日本人と外国人ということじゃなくて、留学生だからという違いではないでしょうか。日本の学生も海外に出ると急にアグレッシブになりますね。

これまで多くの卒業生を送り出されたと思いますが、学生の価値観などに変化があると感じられますか?

自分の世界観ができないというか、自分の何か人間としてのコアになっていく部分というのが、なかなかわれわれから見えにくくなっているというのは感じます。周りに合わせよう、合わせようとしている傾向が非常に強いので、大学の4年間を通じて、何かこれから自分が生きていく上で、核になるもの、あるいは絶対に譲れないものというのを見つけ出すというのが、4年間の大学生活において、とても大事じゃないかなと思ってるんです。

以前の卒業生の間では、野﨑先生の姿からジャン・レノと噂されていたようですが…

最近は、スリムクラブの内間とか呼ばれてますね(笑)

先生ご自身の近況について

最近の興味、趣味、および関心のあることは何ですか?

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仕事以外ですと、何でしょうかね。これは、最初ウェブサイトでたまたま見て興味持ったんですけども、イギリスのファッションブランドに、スーパードライっていうのがあるんです。これは、もう名前からして日本のビールのパクリなんですよね。このファッションブランド、実はもうワールドワイドに展開していて、しかも、デザインの中に日本語入れるんです。ウェブサイトで見て、面白くて欲しいと思ってたんですが、昨年春にスーパードライのハンブルク店がオープンしたんです。購入したブランドのロゴに「極度乾燥(しなさい)」と記されています。スーパードライ:「極度乾燥しなさい。」直訳ですね。これが面白くてね。次に私がねらっているのは、「極度乾燥しなさい」の傘です。傘がぴったりでしょう?。この傘は、カタログに載っているんですが、「極度乾燥せよ」と言うんですから、傘兼用の照る照る坊主ですね(笑)。

卒業生との思い出について、お伺いしたいのですが、例えば、印象に残るような卒業生とかおられますか?

学生は、それぞれ個性があるので、印象に残る学生は多くいます。私のゼミにいた卒業生で、浄土宗でなくて、浄土真宗のお寺さんの子弟ですが、卒業してから後も地域のことにずっと関わっていて、自分のお寺の仕事をしながら、青年会議所の仕事もやって、ボランティアでいろんな地域の仕事をして、さらに佛大で社会学の研究会があるとやって来るんです。そういう職業生活と地域の活動、それから研究活動という3つのことにずっと取り組んでいる彼を見ていると、こういう人生は良いなと、なかなか難しいですけどね。

同窓生との交流について

定期的に同窓のゼミ会や同窓会など行われていますか?
夏休みは、ほとんど日本にいませんし、それから春も割合に外国に行くことが多かったので、これまで全くやってなかったのですが、昨年末に合同忘年会をやりました。今後どうするか、ちょっと考え始めています。
そういうときに、やっぱりフェイスブックとか、ミクシィ等々そういうのは活用されてますか?
フェイスブックに、回生ごとの同窓会のグループを作っていまして、昨年の3月に卒業したゼミ生は全員入れています。遡ってどんどん作ろうと思っていますけども、そのグループの中で交流ができるようにということで、できるだけ集まれる時にみんなで集まろうということで、そこから広がって行けば良いんじゃないかと思います。

最後に、佛大卒業生の方に、先生から一言メッセージを頂きたいのですが。
卒業する時というのは、みんないろんな夢を持っているので、自分の何か志と言えるようなものをずっと持ち続けて欲しいと思います。通信の学生とか、あるいは通信の後に大学院に入って来られる方というのは、本当にずっと志を持って、何かをやろうと思って、ようやく決心がついて入って来るという人達なので、やる気と情熱がもうケタ外れに違うのです。ですから、どうしても就職して働いているうちになんとなく流されていくようなことというのは多いのですが、そういう中でも自分が何かをしたいとか、ただ単に漫然と日々を送るのではなくて、何かそれに加えて行いたいことというのが、聞いて見るとあるんです。それをキチンと自分で持ち続けて欲しいということです。

リレー教員の紹介とリレー教員へのメッセージをお願いします。

所 めぐみ先生
メッセージ・・所先生は何と言いましても、
国際交流センターのエンターテインメント部門の
責任者でございまして(笑)、 留学生研修旅行のカラオケは
あの人の独壇場に(笑)・・。社会福祉学部リコーダー・アンサンブル結成の経緯とか、いろいろ引き出して聞いて下さい。