令和4年5月

怒りを断ったならば、
ひとは安らかに寝る


『ブッダ悪魔との対話』第VII篇第一章第一節 

 仏法僧を深く信じ、心を清らかに澄ましている妻。頻繁に、夫の前で「礼を尽くすべき人、真理の教え、修行僧の集まりに礼を尽くします」と。一方、妻が発する仏法僧への帰依が面白くない夫。やがて「あの剃髪した修行者を丸め込んでやろう」と考えた。
腹立ちで寝られない時もあった夫が、ついにお釈迦さまの前へ。困らせるために「我々は何を断ったら、安らかに寝ることができるのか」と問う。これに対し、
お釈迦さまは”今月のことば”を語り、更に「怒りを断ったならば、ひとは悲しまない」と続けた……。
事態の本質を見抜かれていた夫。その場で帰依し、出家して戒律を受け、清らかな行為を実践し、やがて覚りを得て尊敬される一人となった。
―今を生きるために、現実、物事の本質、原理を正しく見つめるよう、また自己を見つめられるように語り続けたブッダ。その言業を真勢に受け取って実践する者の先には、高い人格の獲得と境地がある。
(宗教教育センター実習指導講師 法澤賢祐)

『法然上人の絵物語』第一巻
(画:別科修了生 菊田水月)

第二段 お誕生
長承ちょうしょう二年四月七日正午、秦氏は男の子を出産されました。その時、空には紫雲がたなびき、どこからともなく白幡が二流ふたながれ飛んできて、館の西側にある大きな椋の木の梢にかかりました。白幡は風に舞い、美しい鈴の音を空に響かし、陽に照らされてキラキラと輝いておりました。七日が経ち、白幡は天に上り去っていきましたが、それからこの椋の木は「両幡ふたはたむく」と呼ばれるようになったそうです。
月日が経ち、椋の木は倒れてしまいましたが、不思議にもかぐわしい香りが常にここに漂っておりました。人々はこのことを崇め、仏閣を建て誕生寺と名付けました。
菊田水月

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