令和元年10月

信をば一念に生まると信じ
行をば一形に励むべし

  つねに仰せられける御詞  

 この御詞(おことば)は、お念仏の元祖法然上人(一一三三~一二一二)のご法語で『昭和法然上人全集』に所収される二十七箇条の第五箇条の文である。その出典は『四十八巻伝』二十一の「上人つねに仰せられける御詞」にある。
この御詞(おことば)の内容は、浄土往生を願う者が念仏を称えるにあたって具えなければならない三種の心(安心:あんじん)と浄土往生を願う者が実践すべき行(起行:きぎょう)を説き、その安心と起行を臨終の夕(ゆうべ)まで一生涯、策励するようにと云っている。
法然上人は善導大師(六一三~六八一)の理解を受けて、『選択集』八において「三心はこれ行者の至要なり。」として「もし一心も少(か)けぬれば即ち生ずることを得ず」と云って、まず安心という心の持ち方を確立することを重視している。
その安心とは、至誠心(真実心、まこと心)、深心(深く信ずる心)、回向発願心(願往生心、浄土に往生したいと願う心)の三種の心である。また起行(きぎょう)とは読誦正行(どくじゅしょうぎょう)(浄土三部経を読誦する)、観察正行(かんざつしょうぎょう)(浄土や阿弥陀仏をよく観察する)、礼拝正行(らいはいしょうぎょう)(阿弥陀仏を礼拝する)、称名正行(しょうみょうしょうぎょう)(南無阿弥陀仏と口称する)、讃歎供養正行(さんだんくようしょうぎょう)(阿弥陀仏を讃歎し供養する)の五種正行(ごしゅしょうぎょう)のことであり、その中、第四の称名正行(しょうみょうしょうぎょう)を正定業(まさしく浄土往生するのに決定(けつじょう)された行為)とし、あとの前三後一(ぜんさんごいち)の行を助業(じ ょごう)(正定業(しょうじょうごう)を助ける行為)と云う。
もの事、何を行うにしても、まずその心の持ち方とそれを行う行為が充分に具わるよう、精進努力しなければならない。
(仏教学科准教授 稲岡 誓純)

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