平成30年7月

わたくしはわたくしの杯で
戴きます


『杯』 森?外   

  森?外の短編小説『杯』の一節で、頁数にすると、八頁ほどの短編です。あらすじは、つぎのとおりです。
十二歳ほどの七人の少女が、大きな銀の杯を持ち、泉の水を飲みにやってきます。そこへ、青い目をした少女が、小さな黒い杯を持ちあらわれます。少女たちは、青い目の少女の杯を見て哀れみ、大きな銀の杯を貸そう、といいます。このとき、青い目の少女は、毅然と、冒頭の一節を、フランス語でのべるのです。
自分の生まれ持った「杯」は自分しか持っていない、したがって、それを長所に生きるしかない。人の真似や、持っていないものを羨んでも仕方がない、といった意味合いを汲むことができましょう。
または、孤高の存在となっても、気高く生きることの大切さをしめしているともいえます。
?外は、おそらく、この小さな黒い杯をもった八番目の少女に、東洋と西洋の狭間を生きた、あるいは、軍医と文学に生きた、おのれ自身を投影したのではないでしょうか。
(歴史学部准教授 斉藤 利彦)

南伝 仏教南歩き No.4
ミャンマー ゴールデン・ロック
ゴールデン・ロックは、ミャンマー南東部のモン州のチャイティーヨー山にある岩で、チャイティーヨー・パゴダともいわれ、仏教徒の巡礼地として知られています。
巡礼者の寄付によって金箔が貼り付けられた花崗岩の上に、高さ7.3mのパゴダ(仏塔)があり、伝説では、ゴールデン・ロックは、仏陀の遺髪の上に載せられたため落ちないといわれています。この「重力の否定」を一目見ることで、多くの人々に仏教へ帰依するためのインスピレーションを与えています。
写真はチャイティーヨー山の頂上にあるゴールデン・ロック。

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