平成30年11月

善を以て悪を攻める


『無量寿経』巻下   

 『無量寿経』の下巻には、五悪段といって、現世を生きる我々人間が、殺生・偸盗・邪淫・妄語・飲酒といった五つの悪を犯し、その悪によって如何にこの世で苦しみ、さらには次の世でも苦しみ続けるかが説かれます。そして、この五悪による苦しみを離れるために”五善“を行うことが説かれています。ところが、この”五善“は五悪のように積極的な内容を持つものではありません。
「五悪を行わないこと」、これが五善なのです。悪を行わないことが善であるというのならば、それほど難しいことではないように思うかもしれません。しかし、『無量寿経』はこうも説きます。
汝等能くこの世において、端心正意にして、
衆悪を作さざるを、甚だ至徳とす。
つまり、様々な悪を行わないことが至極最上の徳だということです。というのも、仏の世界と比べるならば、我々の世界には悪が溢れています。こうした環境の中では、「悪を行わないこと」こそが素晴らしい行いであるという訳です。
環境に流されることなく、悪を押し止めること、これを「善を以て悪を攻める」と『無量寿経』は説いています。
(仏教学部講師 市川 定敬)

南伝 仏教南歩き No.8
ラオス ワット・シエントーン

ワット・シエントーンは、ラオス北部の古都ルアンパバーンにあり、1560年にセーターティラート王によって王家の菩提寺として建立されました。屋根が軒に向かって低く流れるようなルアンパバーン様式の建物で、この地で一番荘厳な寺院といわれています。かつては、王族の神聖な儀式に使用され、シーサワンウォン王の誕生した場所でもあり、王の逝去時に使用された霊柩車が境内に納められています。
写真は、ルアンパバーン最大の仏教寺院ワット・シエントーン。

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