令和6年2月
何事も成し遂げるには一歩一歩の積み重ねしかない
稲盛和夫

急いでいる時や体力があると思っている時は、階段を何段かずっ飛ばして上がろうとしてしまいます。でも急いでいる時に限って蹴躓いたりして、還って時間がかかってしまいます。躓かすに上がれてしまう時もありますが、その後息が切れてしまい、すぐさま次の行動に移ることができないことが殆どです。山登りをする時も、体力があるからと大きな歩幅で歩いたり、大きな段差や急な坂をまっすぐ登ったりするとすぐに疲れてしまいます。小さく細かな歩幅で、足の裏全体でしっかりと踏み込んで歩く方が、結果的に疲れず、また滑りにくく安全に登ることができると言います。
何かを成し遂げたいと思う時、ついつい焦って走ったり、近道が無いか探したり、早く目的を達成できる特別な方法ばかり探してしまいます。でもそんな道や方法は簡単に見つかりませんし、基礎をおろそかにしたら、結果的に不安定なものになってしまいます。基礎工事をしっかりしないと、高くて大きな建物を建てることはできません。一歩一歩、しっかりと脚下を見つめ、確実に踏みしめて前に進みたいものです。
(仏教学部教授 曽和 義宏)
『法然上人の絵物語』第五巻
(画:別科修了生 菊田水月)
第三段 中川の実範、弟子となる
中川の実範阿闍梨は法然上人の仏道修行の才能に深く感心し、自分の弟子と認めて灌頂を授け、真言宗の大事を余すところなく上人に伝えられました。実範は密教の修法と教学に通達していただけでなく、他宗の教えにも詳しかったのです。それなのに、実範は法然上人に帰依するあまり、自分の実名を書いた名簿(二字)を差し出して、上人の弟子となりました。
菊田 水月