令和5年10月
少欲知足
『遺教経』
「少欲知足ーは古来より重要視されてきた仏教思想です。特に『遺教経』という経典の言葉がよく知られており、少欲に ついては 、「多欲の人は利を求めることが多いので苦悩もまた多いのである。少欲の人は無求無欲であるのでこの患いがない」とあり、知足については、「知足の人は地上で寝起きしていても充足している。不知足の人は天堂で過ごしていて も満足するということがない」とあります。
初期仏教においては最低限の所有で生活を送る頭陀行という厳格な実践と関連づけられることか多かったようですが、現在では必要以上に物を求めない「良い習慣づけ」の意で一般的に解釈されています。
私たちは何か物を欲しているときは、何とかしてそれを手に入れようと煩いますし、手に入れたならば、それが失われることを憂い、更に他の物を求めてしまいます。際限のない我欲の中で、自身も他者も傷つけることになります。
時には一歩立ち止まって自分自身を見つめることの大切さを教えてくれる言葉と言えます。
(仏教学部講師 加藤 弘孝)
『法然上人の絵物語』第四巻
(画:別科修了生 菊田水月)
第五段 仁和寺の慶雅を訪ねる
法然上人は、華厳宗の名匠、仁和寺の大納言法橋慶雅を訪ね、『十住心論』の解説や華厳宗に対する自身の理解について語りました。それを聞いた慶雅は、華厳宗を受け継いでいる自分の理解を超えていると大変喜び感動し、法然上人の申し出もあったので、法脈の系統と華厳宗の書物を渡されました。そしてまた、慶雅は自身の臨終の時には、法然上人を招いて戒を受け、法然上人の弟子となられたのです。
菊田 水月