令和5年12月
念仏を修して浄土を求むるは、
釈迦・弥陀の御こころにあいかなえリ
法然上人『大胡太郎実秀が妻室のもとへつかはす御返事』
このことばは、法然上人に帰依した関東武士、大胡太郎実秀の妻に宛てた手紙の一節です。称名念仏が釈尊と阿弥陀仏の「御こころ」にか なうものであることは、「浄土三部経」の各所に説かれています。たとえば『無量寿経』においては阿弥陀仏が「念仏往生の願」を誓っており、『観無量寿経』
では釈尊が未来世の人々のために称名念仏の教えを伝え残しています。
釈尊は娑婆世界から極楽浄土へ「Go,Go(さあ、おゆきなさい)」と促してくれます。これを発遣といいます。これに対して極楽浄土から娑婆世界に対して阿弥陀仏が「Comeon,Comeon(さあ、おいでなさい)」と招き呼んでくれています。これを召喚といいます 。この発遣と召喚に任せて、ただひたすらにお念仏を称えることを勧めているのです。
人は人生の中でいろいろな目標を立てますが、その途中で挫折・不安を感じることは多々あります。そんな時に「私」を後押ししてくれる声や、迎え入れてくれる声はなんとも頼もしいものです。
(仏教学部准教授 南 宏信)
『法然上人の絵物語』第五巻
(画:別科修了生 菊田水月)
第一段 学問の学び方について
法然上人は、弟子たちに学問の学び方について次のように説かれました。
「なにを学ぶべきかを最初にみつけることが肝要である。師の説をそのまま鵜呑みにするのではなく、みずからが広く論書や注釈書を読み、視野を広げ、編目を一覧して大意をとることが必要である。また、諸宗の学はそれぞれに別であるから、自宗と異なるのは当然なことである」と。
菊田 水月