令和6年9月
心を端し 行を正すべし
『無量寿経』
仏教の教えによれば、生死流転の世を厭い、出離を願いつつ善行を積むことを目指さなければならないお互いです。そのためには、心を端し、行いを正すことが必要となります。
ただ、私たちはいつも心が揺れ動き自分に都合の良い行動をしてしまいます。三日坊主という言葉に代表されるように一度決めたことを継続することも難しい状況です。私たちの心は移ろいやすく、心を端すことさえも難しいように感じます。加えて、行いを正すとなればその難易度は高まるでしよう。心を端すことも行いを正すこともできないのが普通の人間、凡夫なのです。でも、できないからとはなからあきらめるのも間違っています。
そのような私たちはどのようにすればよいのでしょうか。自分を知り、揺れ動くこと、できないことを受け入れて、対処法を考えていかなければなりません。これこそ「還愚」です。自分を見つめ、向き合い、頑張りすぎず、怠けすぎず、自らを成長させるという態度が必要なのです。
(教育学部教授 佐藤 和順)
『法然上人の絵物語』第六巻
(画:別科修了生 菊田水月)
第四段 法然上人、「順彼佛願故」の文、深く魂に染み、心にとどめる
法然上人は、戒定慧の三学を修められる器ではないと自覚し、みずからに相応しい教えを求め、嘆きながら経蔵に入り、悲しみながら聖教に向かった。そしてついに、善導和尚の『観経疏』の一文 に出会ったのである。それは、深く阿弥陀仏の広大な願し、。こ原第じている。それゆえに「順彼佛願故」の文を深く心にとどめたのであった。こうして、法然上人は称名念仏を毎日六万遍称える念仏行者となり、晩年には、更に一万遍を加えて七万遍を称えた。
菊田 水月